【停電対策 #1】EVの電気を家で使うには?V2Hの仕組みと停電前の確認

EVやPHEVに電気が残っていても、車を家の分電盤へ直接つなぐことはできません。住宅へ給電するには、対応車種、V2H、切替設備や分電盤、適切な電気工事が必要です。

この第1回では、補助金や導入費用を扱いません。停電時に何を動かしたいか、そのためにどの機器と回路が必要かを決めるところまでを整理します。

最初に決めるのは、残したい生活機能です

停電対策を「家中を普段どおり動かす」と考えると、必要な電力をつかみにくくなります。まず、停電時にも残したい生活機能を書き出します。

優先する機能 機器の例 事前に確認すること
明かり 居室・廊下・階段の照明 どの照明回路へ給電されるか
通信 スマートフォン、Wi-Fiルーター 充電器とルーターの接続先
食品の保管 冷蔵庫・冷凍庫 起動時を含む消費電力
暑さ・寒さへの対応 エアコン、扇風機、電気毛布 100V・200V、同時使用の上限
給湯・給水 給湯器、給水ポンプ 停電時に電源だけで動作するか
医療・介護 個別の機器 メーカーと医療・介護の担当者への確認、代替手段

医療・介護機器は、家庭用V2Hだけを唯一の電源にしないでください。必要なバックアップ方法と連絡先を、機器のメーカーや担当者へ個別に確認します。

V2Hは、車と住宅を双方向につなぐ設備です

V2Hは「Vehicle to Home」の略で、EV・PHEVへの充電と、車両から住宅への放電を行う設備です。次世代自動車振興センターも、V2Hを「EV・PHEVへの充電と、車両から施設への放電ができる装置」と説明しています。

電気の流れは、概ね次のようになります。

平常時:電力系統・太陽光など → V2H → EV・PHEVへ充電
停電時:EV・PHEVの駆動用電池 → V2H → 切替設備・分電盤 → 対応回路

車両に100Vコンセントがある場合は、家電へ直接給電できることもあります。しかし、それは分電盤を通して住宅の回路へ給電するV2Hとは別の使い方です。利用できる電圧、出力、接続できる機器を、車両の取扱説明書で確認します。

対応車種と対応機器は、型式で確認します

「EVならすべてV2Hに対応する」とは限りません。車両側が外部への放電に対応し、選んだV2Hとの組み合わせがメーカーの適合表に載っている必要があります。PHEVも車種によって対応が異なります。

確認する順番は次のとおりです。

  1. 車検証や注文書で、車名だけでなく型式と登録時期を確認する
  2. V2Hメーカーの最新適合表で、充電・放電の両方に対応するかを見る
  3. 必要なオプション、ケーブル長、車両側の装備条件を確認する
  4. 車両メーカー側にも利用条件や放電下限を確認する

たとえばHondaは、Honda V2H Standの対応車種と充放電の可否、車種ごとの充電上限・放電下限を公式ページに掲載しています。ニチコンもV2H製品ごとに対応車種を案内しています。カタログの「V2H対応」だけで決めず、購入する型式同士を照合します。

容量と出力は、別々に見ます

車両の電池容量が大きくても、一度に使える電力が無制限になるわけではありません。

  • 容量(kWh)は、どれだけの電気を蓄えられるか
  • 出力(kWまたはkVA)は、その瞬間にどれだけの機器を動かせるか

停電時に使える時間は、車両の残量、放電下限、変換ロス、家電の消費電力、気温などで変わります。記事上で「何日使える」と固定せず、施工店へ次の条件を渡して試算してもらいます。

試算へ入れる情報 記入内容
車両 型式、電池容量、停電開始時に確保したい残量
V2H 自立運転時の出力、対応電圧、放電下限
使用機器 定格消費電力、起動時電力、使用時間
同時使用 同時に動かす組み合わせ
回路 停電時に給電される分電盤・コンセント

全負荷と特定負荷で、使える範囲が変わります

停電時にどの回路へ給電するかは、住宅側の構成で変わります。

全負荷型は、原則として住宅全体の分電盤を対象にする方式です。ただし「全負荷」は、家電を無制限に同時使用できるという意味ではありません。V2Hの出力を超えないよう、使う機器を選ぶ必要があります。

特定負荷型は、冷蔵庫、照明、通信など、あらかじめ選んだ回路へ給電する方式です。停電時の優先順位を固定しやすい一方、対象外のコンセントや200V機器は使えない場合があります。

見積もりでは「全負荷対応」という商品名だけで判断せず、停電時の単線結線図や回路表を出してもらいます。どの部屋のどのコンセントが使えるのかまで確認すると、導入後の認識違いを減らせます。

太陽光発電は、停電時の動作を別に確認します

太陽光発電があっても、停電時に平常時と同じように住宅へ電気が流れるとは限りません。資源エネルギー庁は、停電時に自立運転機能を使う手順を確認するよう案内しています。自立運転用コンセントから給電する構成と、V2Hや蓄電池と連携する構成では、操作と使える回路が異なります。

確認するのは、次の4点です。

  • 停電を検知したあと、自動で切り替わるか、手動操作が必要か
  • 太陽光から住宅・車両へ給電できる経路があるか
  • 悪天候や夜間は何を電源にするか
  • 復電時に、どの操作で通常運転へ戻すか

太陽光、蓄電池、V2Hの役割と組み合わせは第4回で比較します。ここでは、太陽光があるだけで夜間まで使えるとは考えないことが重要です。

導入前に停電時の動作まで確認します

設備は、設置が終われば停電対策が完了するものではありません。引き渡し時に、実際の操作を確認します。

  1. 停電を想定した切替手順を施工店と確認する
  2. 給電対象の照明とコンセントを一つずつ確かめる
  3. 同時に使わない機器を家族で決める
  4. 車両を接続する場所とケーブルの取り回しを確認する
  5. 取扱説明書、施工図、緊急連絡先を停電時にも見られる場所へ置く
  6. 定期的に車両残量と機器の状態を確認する

V2Hは、EV・PHEVの電気を住宅で使うための選択肢です。使える範囲は、車両、V2H、分電盤、回路、操作方法の組み合わせで決まります。次回は、この構成を自宅へ入れる場合に、助成を引く前の費用をどう見積もるかを整理します。

参考にした一次情報

第2回:V2Hの導入費用を、本体・工事・周辺費用に分ける